岩崎惇

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スメアと血培by谷口智宏

「Salmonella sp.は本当に細胞内寄生菌なんだな」 免疫抑制剤を使用されている方の化膿性関節炎の方が来られました。関節内穿刺では、グラム陽性球菌ではなく、何とグラム陰性桿菌が少数見えました。その見え方も特徴的で、細胞外よりも細胞内の方が数が多く、写真真ん中のように白血球内で複数分裂しているグラム陰性桿菌がちらほら見えました。ご本人に下痢などの症状はありませんでしたが、細胞内寄生するグラム陰性桿菌といえばSalmonellaかなあ、だけど教科書には書いてあっても実際には見たことないけどなあと思いつつ、抗菌薬は、緑膿菌までのグラム陰性桿菌をカバーするセフタジジムで攻めようかなと考えたものの、主科は整形外科の先生方だし、もしも培養で黄色ブドウ球菌が生えてしまったら(化膿性関節炎では最も頻度が高いです)まずいと思い、守りのセフェピムを選びました。 結局培養では見事Salmonella enteritidisが生え、アンピシリンにnarrow downできました。 もしも関節液をグラム染色していなかったら、黄色ブドウ球菌をカバーするセファゾリン、あるいは免疫抑制者ということでバンコマイシンを使用していたと思いますが、どちらもSalmonellaはカバーしないところでした。 いやー、やっぱりグラム染色って直接役に立ちますね。

「Clostridium difficile関連腸炎の便スメア」 CDによるいわゆる偽膜性腸炎の診断に、便スメアが役に立つ場合があります。 ・数ヶ月以内にCD関連腸炎を起こしたことのある人が下痢をした場合(トキシンの検査は、感染が治まった後もしばらく陽性になるはずなので、トキシンが陽性と出ても、過去の感染か、現在の感染か判断が難しいです) ・入院中に下痢が始まり、トキシンを出したが陰性。でも昨日よりも今日の方が下痢がひどくなっている(こんなとき毎日便スメアを観察していると、最初は少数だったグラム陽性桿菌が、次の日には数が増えてきていて、CD関連腸炎を強く疑えることがあります)

「キャンピロバクター腸炎をスメアで診断できる消化器外科医を目指してほしい」 うちの病院では、研修医1年目は2週間ずつローテートします。とても短い期間ですが、自身の努力と運によってはとても充実する場合があります。 今回の2週間は、消化器外科志望の初期研修医が回ってきました。するとたまたまですが、消化管感染症目白押しでした。 1. 便スメアでキャンピロバクター腸炎を診断 不明熱で入院した患者が、翌日から水様性便が出て、グラム染色で初期研修医がキャンピロバクターを見つけました(写真の中心部にいる、らせん状や、S状のグラム陰性菌です) 2. 便と胃液の生スメアで糞線虫を発見 細菌性髄膜炎で入院した患者が、播種性糞線虫症でした。卵から糞線虫が孵化する瞬間も目撃。 3. 便スメアでClostridium difficile腸炎を診断 夜間はToxin検査ができませんが、グラム染色で多核白血球と特徴的な芽胞を伴うグラム陽性桿菌を見つけて診断できました。 4. サルモネラ敗血症を経験 腎盂腎炎による敗血症と思ったら、血液培養から検出したグラム陰性菌はSalmonella enteritidisでした。残念ながら下痢便のグラム染色は診断に役立ちませんでした。 アメーバ腸炎を急性虫垂炎と誤診しないように、便の生塗抹にも慣れ親しんでおくように指導しました。将来何かの役に立つといいなと思います。当然の流れとして、この初期研修医には、「う○こ先生」のあだ名がつきましたが。 僕の先輩の外科医は、研修医が終わって指導医になった後でも、救急室に来た腹痛の患者の便グラム染色を自分で行い、キャンピロバクター腸炎と診断し、治療していました。キャンピロバクター腸炎は、下痢が遅れて出ることがあり、不明熱や急性腹症を呈する場合があります。

「絨毛膜羊膜炎は嫌気性菌をカバーする抗菌薬が必要」 若い女性が、他院で絨毛膜羊膜炎を発症し、セファゾリンを投与するも悪化、アミカシンを追加するも、40℃の発熱と悪寒戦慄を来たし、搬送されてきました。帝王切開の創部は臭く、膿のスメアで多形性を示すグラム陰性菌が多数見えました。絨毛膜羊膜炎は、膣内の細菌が感染するはずなので、当然嫌気性菌をカバーする必要があります。この方は転院患者だったので耐性菌のリスクも高く、嫌気性菌を広くカバーし、グラム陰性桿菌も広くカバーするカルバペネム系で治療しました。手術でドレナージも行い、嫌気培養でPrevotella bivia(膣内の常在菌)が検出され、クリンダマイシン耐性だったので、最終的にセフメタゾールにnarrow downして、何とか子宮は温存できました。 抗菌薬の効果を、強いとか弱いとか、そんな単純なとらえ方をしていると、このような大失敗をします。グラム陽性菌、グラム陰性菌、嫌気性菌のどれをカバーするのか理解しておくことが、必須条件です。ちなみにセファゾリンはグラム陽性菌はよくカバーしますが、グラム陰性菌はあまりカバーせず、嫌気性菌は全然だめです。アミカシンはグラム陰性菌を広くカバーしますが、グラム陽性菌も嫌気性菌もだめです。

「連鎖球菌は生スメアで連鎖している」 血液培養から連鎖状のグラム陽性球菌が検出された場合、連鎖球菌、肺炎球菌、腸球菌の大きく3つの可能性を考えます。これらは溶血性や、菌の形態などからある程度の予想がつきますが、生スメアもとても役立ちます。つまり血液培養のボトル液を1滴スライドガラスに垂らして、カバーガラスを載せ、それを直接顕微鏡でみてみると、菌の運動性が分かったり、連鎖球菌であれば写真のようにまさしく連鎖した菌が見えます。

「ランブル鞭毛虫はグラム陰性虫に染まる」 ある基礎疾患を持った方が、10日続く下痢で外来に来られました。腹痛は軽度で水様性の下痢です。レントゲンを撮ったりしている間に便がとれたので、アメーバがいるかもなあと思いながら生スメアをしてみると、何か小さいくるくる回る虫体が見えました。救急室で顕微鏡を見ながら、思わず「え!?」と叫んでしまいました。少し落ち着いて考えてみて、あ、ジアルジアかなと思いつき、検査室でみてもらいました。うちのような田舎の病院ではめったに出ないらしく、副技師長さんの技師人生でも2人目だそうです。ギムザ染色でもくっきりと染まり、ジアルジアGiardia lamblia (最近はG. intestinalis)、和名でランブル鞭毛虫。僕はてっきり十二指腸液でしか栄養体は見えないと思っていたので、便の生スメアで遭遇してびっくりしてしまいました。当然のことながら、次はグラム染色ではどのように染まるのかなと考え染めてみると、きれいなグラム陰性虫に染まっていました。下痢便のグラム染色は、Campylobacter、Vibrio、Salmonella、Clostridium difficile、糞線虫、に加えてランブル鞭毛虫も見つけることが出来ますね。

「顔面丹毒における眼脂スメア」 顔面の丹毒の人が救急室に来ました。ヤブ蚊にかまれた後、耳を掻いていたら、左耳の後ろから一気に鼻まで赤く腫れてきたと。この方は興味深いことが二つありました。一つは左耳から鼻だけでなく、後頚部も赤く腫れていること。もう一つは腫れている左側の目に、眼脂がたまっていたことです。前者に関しては、耳の後ろが菌のエントリーのはずなので、寝ている間に重力の関係なのか(?)後ろ側に炎症が広がったようです(入院翌日には、左耳の発赤はひいてきましたが、右耳も後頚部経由で発赤腫脹が広がりました)。後者ですが、左目周囲の皮膚の炎症も強いから、眼脂がたまっていると考えました。そこでさっそく、連鎖球菌が見えるかもと予想して、眼脂スメアをしてみました。抗菌薬セファゾリンが始まった後でしたので、その影響はあるはずでしたが、白血球と、貪食されているグラム陽性球菌と、ハの字型のグラム陽性桿菌が見えました。培養でも、Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimlis (当院の蜂窩織炎の血培データでは、検出頻度No. 1です)と、Corynebacteriumが生えました。セファゾリン点滴と、退院後のアモキシシリン内服ですっかりよくなりました。 僕は内科医なので、眼脂をグラム染色するという発想は研修医の頃はありませんでした。ですが、以前眼科志望の若い研修医の先生が当院に研修に来られて、僕らがスメアしまくっているのをご覧になり、「自分も眼脂のスメアをしないといけないですね」と おっしゃっていたのを心の片隅にとどめていて、10年近くたってその心意気(?)が自分自身の役に立ちました。こういう経験は、臨床医としての醍醐味ですね。

アブストラクト・ジャーナル

Yusuke Yamawaki

「抗生剤投与後ではスメアの方が培養よりも感度がいいことも」 肺炎球菌による髄膜炎の方が入院しましたが、全身の診察により肩関節が腫れていることに気づき、穿刺すると膿が引けました。それをスメアしたのがこの写真です。グラム陰性に染まった双球菌がちらほらと貪食されていました。髄膜炎の治療は既に開始していたため、膿培養は陰性でしたが、髄液と血液培養で肺炎球菌を検出したため、この双球菌は肺炎球菌で間違いないようです。抗生剤が始まった後では、培養よりもスメアの方が感度が高いことがあります。